Excès, et Marges.

「余白への書き込み」

文系院生のための就活マニュアル:自己分析編①

 

多くの就活本が既に同様のことを書いていますが、就活における自己分析を定義するとすれば、それは「ESや面接においてアピールとなりうる自分の資質を見極め、それを裏付ける経験を棚卸しし、長所として簡潔にまとめ上げる作業」であると言えます。「自分の価値観を分析し、適切な職業を探し出す」というものではないことに注意してください*1

具体的な作業においては、重大な場面においてどのような価値観や判断の下、意思決定を行うか、という観点が、自己分析にて大きな指標となるのではないかと私は考えています。今までの人生における主要な出来事(部活、受験、サークル、アルバイト、etc)を振り返ってみて、自分はどのような基準にもとづき進路を決定したり、アルバイトを選んだり、サークルをやり通したりしたのか、書き上げてみると良いでしょう。

しかしながら、多くの人は大した理由もなく部活を選び、偏差値と科目が自分の成績と合っているから文学部を受験し、サークルを一年で辞め、アルバイトをお金を稼ぐ手段としてしか考えてこなかったはずです。明確な意思決定の下、無駄のない二十数年間を過ごしてきたのであれば、わざわざ自己分析をする必要はないでしょう。

その場合、面接やESのネタになる経験を見つけて、自分の長所を裏付ける意思決定をすりあわせていく作業が必要になります。というのも、あらゆる意思決定には長所もあれば短所もあるからです。物は言いようなので、可能な限り良い部分を抽出するようにしましょう。物事が長続きしない人は好奇心が旺盛でフットワークが軽いとも言えますし、無口な人は思慮深く、言葉遣いに気を使える人であるとも言えます。上記の例で言えば、サークルをすぐに辞めた理由は学業に専念したかったから、アルバイトに精を出したのは金銭的に余裕がなく自立した生活を送りたかったから、等といった具合です。

この作業が必須であるのは、「意思」というものの特性に理由があります。何故なら、本人がどのような意図で活動したか、それは本人にしかわからないことですし、いくらでも改変可能だからです。自分の経歴を見て、大きく目につく転機(大学院を変更した、休学・留年した、といった履歴書上のものも含めて)があれば必ず理由付けを考えておく必要があります。それが一貫した価値観の下で行われたものであるような理由付けであればベストです。なぜなら、そういった部分は面接で突っ込まれるからです。面接官は、そういった紙面上の特徴を質問することで、あなたの考え方や価値観を見ようとしているのです。

例えば、私自身は就活中「学習欲」という長所を一つ挙げ、それに準じて大学院を変更したことや休学の事情を作りこみ、面接に臨んでいました。本当は(そういう動機は多少なりともあったとはいえ)それほど大層な理由で大学院を変更したり休学したりしたわけではありません。

ここまでくるとお分かりかもしれませんが、学生が良く面接で話すアルバイトやサークルの体験というのは、あくまで自分はどのような人間であるかを説明するための材料に過ぎないのです。本質的な部分はあなたのエピソードではなく、あなた自身がどのような人間か、にあることを常に意識してください。もしその体験がユニークなものである必要性があるとするなら、それは面接官を退屈させないかどうか、程度のものでしかありません。それも、こちらの話が冗長であれば全くの無駄になってしまいます。

しかし、逆説的ですが、自分はこういう人間であるという説明をするにあたって、そういった経験は論拠として最低限必要ということになります。例えば「学習欲」を長所として提示するのであれば、文句のない学業成績や検定証を履歴書に添えるだけで説得力が増しますし、それができないのであれば代替となる何らかの証明を見せる必要があるでしょう。ですので、わかりやすい客観的なデータを就活前に揃えておくことをおすすめします。それらは多くの場合、決定打にはならないのにネガティブチェックには使われます。つまり、それらを欠いてしまうと「君は留学に行ったみたいだけど、なんでTOEICを受けていないの?」「勉強したくて大学院に行ったのに、なんで学業成績は良くないの?」と、要らぬ疑問を持たれることになります。よって、なるべく自らの経験を棚卸しして、そこから一貫した論理を導き出す、という手順を踏むことを推奨します。

とはいえ、就活を始めた直後は、どのような点がアピールポイントになるかすらわからないと思います。就活本を立ち読みするのもいいかもしれませんが、ああいった本は優れた経験(大会で優勝した、バイトの売上を二倍にした、優れた研究を行い学会発表で評価された、等)を前提としているので、あまり参考にならないと思います。手っ取り早い方法は、周囲の人間(友人、同僚、先輩など)に「私はどういう人間だと思いますか?」と質問して回ることです。今どき就活で自己分析をすることなど世間の常識でしょうし、怪訝な顔をされることもないでしょう。他人の目線は自分で見落としがちな自分の癖や傾向、性格を知る上で大いに役立ちます。

もっと客観的かつESにおいて実践的なデータを得るためには、ストレングス・ファインダーというアプリケーションが有効です。これはWEBテストなどでよく見かける適正検査の詳細なヴァージョンで、選択肢に回答していくだけで自分の意思決定における傾向を分析してくれるものです。精度も高く、意思決定をはっきりした言葉でまとめてくれるので、自己分析をしていてパッとしたフレーズが見当たらなかったりしたときは活用するとよいでしょう。

これらの情報を下に、自分なりの長所を言葉として考えだし、自分の経験とすりあわせて一貫したエピソードにまとめ上げる作業が、自己分析であると私は考えています。故に、「ユニークな体験をしなければ面接で勝てない」、「TOEICを受けていないなら捏造しなければならない」という考えは本質をついておらず、リスクに見合う効用をもたらさないと考えます。

 

*1:その作業も重要ですし、大いに行うべきことではあります。しかし、例えばESにを書いてる時に適職探しをしだすといつまでたっても何も書けなくなります。決して就職活動における自己分析と混同すべきではありません。

文系院生のための就活マニュアル:準備編②

 

3月1日までに、企業を分析するためのツールを身につけたら、就活の解禁とともに、実際に個別的な分析に移っていきましょう。主な作業としては次の2点があります。

  • 説明会の参加・OB訪問
  • 企業研究 

主に説明会やOB訪問では主観的な印象を測るため、企業研究は客観的な資料を掘り下げるため、という意味合いが強いです。しかしながら、これらの作業は相互に連関しています。詳しくは後述します。

  

 

説明会・OB訪問

 

前段階として、四季報などを使って候補となる企業を選別した後は、興味がある事業を行っている企業(+できれば興味のない業界に属する企業の)説明会に参加しましょう。その際、参加前に予習を行っておくことが望ましいです。というのも、説明会はそこにいるだけで企業の特徴や雰囲気を受動的に感じ取れる場である反面、そこから知ることのできる情報はHPなどから入手できる情報と大差ありません。わざわざ都心に赴いて貴重な時間と電車賃を割く手間を考えれば、それほど重要な情報であるとは言い難いです。まず、説明会に参加する意義を積極的に抑えておく必要があります。

では説明会に参加する意義とはなにか。一つは、説明会が、こちら側が知りたい情報を、匿名の状況で、ピンポイントに質問することができる数少ない機会であるということに存します。業界や企業の分析を行っていくうちに、わからないことは沢山出てきます。例えば企業HPの有価証券報告書を読んでいると、財務状況が何故急変したのか、セグメントの比率は何故このような内訳になっているか、などといった疑問が浮かんできます。もっと簡単な疑問なら、この企業はなぜ同業他社に比べて利益率がいいのか、この企業のこの職種はどのような働き方をしているのか、といったものもあると思います。

そもそも、企業研究は何のためにするか。2つの意味があります。一つはESや面接対策であり、もう1つは自分が将来働く企業を深く知るためです。これら2つの側面は作業として独立しているわけではないため混同しやすいですが、実際に企業研究を行うにあたって、目標として明確に区别すべきポイントです。

しかしながら、面接でされる質問に答えるために、ひいては自分がその企業で働くにあたって絶対に抑えておかなければならないポイント(転勤の頻度、福利厚生といった事柄も含め)を、遠慮なく聞くことができる場というのは、意外と限られています。そうした質問を的確に行うためには、事前の予習がある程度不可欠であると言えます。企業HPにざっと目を通し、質問したいことを事前に洗い出しておくのが望ましいです。*1

二つ目は、説明会が実際にその企業で働いている人と接することのできる機会であることです。就職活動において企業はかなりの割合で「その人が自社のカラーに合っているか」を重視しているように私は感じました。学生としても、これから自分が長く務めることになる企業にいる人間が自分と全く異なる性格の人ばかりという状況は避けたほうが望ましいかもしれません。ある程度面接前に、その企業のカラーとの摺り合わせを行っておくことで、ミスマッチを最小限に抑え、ムダな手間を省くことが出来ます。また、その企業のカラーや求めている人材、能力を理解することで、ESや面接で的はずれなアピールをしないようにすることも重要です。

これらの作業はOB訪問でも行うことが出来ます。情報の得やすさで言えば説明会より上でしょう。しかし、私はOB訪問は行いませんでした。単純に時間的な余裕がなかったためです。できればエントリーシートを出す前に、どうしても行きたい企業があれば行っておくとよいでしょう。

 

 

企業分析

 

上述の通り、説明会と並行して、企業分析を掘り下げて行う必要があります。企業HPで分からない点が出てきたら、説明会で聞けば良いですし、業界について俯瞰的に知りたい場合は業界本を読んでみたり、図書館を活用して定期刊行誌を読むという手もあります。

基本的に四季報から得られる情報は、現在からさかのぼって数年程度のものに過ぎません。ある企業が優れた業績をあげていたとして、それがどのような理由に基づくものなのかを把握しなければ、その企業が優良企業であるかどうかは判断できません。たまたま業界全体が上向きであるために、一時的に業績が良いだけである、ということも大いにありえます。自分が勤務するにあたって重視する事柄が、今後数十年にわたってその企業にありつづけるのかをある程度予測する必要があります。

また、企業の内実について知りたければvorkersのような転職情報サイトや、valuation matrixのような投資家情報サイトを活用すると良いでしょう。後者は踏み込んだ財務分析を知る上で参考になりますし、前者は実際に働いている[た]人のレビューを読むことが出来ます。特にvorkersは働き方やライフワークバランス、事業展望について仮借ない意見が載っており、企業研究の上で非常に有用です。ただし、基本的にこのサイトに書かれているレビューの多くは退社した人によるものであるため、個人の業績や職種、キャリア、主観に多分に影響を受けたものであることも否めません。その辺は留意しておくべきでしょう。

 

*1:ただし、注意しておかなければならないことは、先輩社員や人事の人間が、そういった的を射た質問に対し適切な応答を行うことができるかは分からないということです。大企業ならなおのこと、日々の業務をこなしながら自分が務めている企業の実情を正確に把握することはなかなか難しいことでしょう。また、先述の通り、財務諸表などを調べあげて選考に臨み、戦略的に内定を取る人間は少ないです。ですので、あまり先輩社員の志望動機も当てにならないと考えたほうが無難です。逆に言えばそれができている社員は本当に優秀な人材でしょう。

文系院生のための就活マニュアル:準備編①

 

まず、3月1日に就職活動が始まる前からできる準備について話します。誰にでもできる作業として具体的には次の3つが挙げられると思います。 

・読書

四季報による企業分析
・筆記対策

 順番に見ていきます。

 

 

読書

 

大前提として、個人が所属する学部で得られる知識と、個人が社会に出る上で必要な知識は一致しないということを、特に人文系の学生であれば*1、強く意識する必要があります。

いずれ社会にでることを念頭に置いているあなたにとって、大学に在籍する数年間というのは、学問を究めるためだけに存在しているわけではありません。なぜこのことを強調するかというと、特に文系大学院というコミュニティはそこに在籍する人間に、善かれ悪しかれアカデミズムを多分に意識させる場であるからです*2

例えば、人文系のコミュニティでは社会科学や自然科学と比較した上での人文学の有用性、優位性を説く人が数多く存在します。しかしながら、社会にでることを意識し始めたあなたにとって、大事なことは人文学の存続云々ではなく、自分自身が社会に出るために必要な知識を身につけることです*3。就活においては、企業の財務状況を分析する知識や、ビジネスを行う上で最低限押さえていなければならないロジックがないと、右も左も分からないという状況におかれてしまいます。こうした知識は付け焼き刃だろうと、あると無いとでは大きな差を生むことになります。

もう1つ、企業が個人を採用する指標は、つきつめれば全て利潤の追求に還元されるという現実を踏まえる必要があります。市場において自らを商品価値化するための能力や知識は、学部を問わず社会に出るにあたってどの学生も身につけておかなければならないものです。

そのため、知識のバランスに乏しいという自覚がある人は、就活の前にある程度読書によって広汎な知識を蓄えておくことを推奨します。重ねて言いますが、これは人文系の学生に限った話ではありませんし、一方で人文系の学生が優れていると目されがちな能力(読解力や言語運用能力など)も、人文系の学生なら必ず身につけているものとは限りません。なるべく多くの本を読み、自分に欠けている知識を予め理解しておく必要があります。

とりあえず、私が就活にあたって読んだ本は以下のとおりです*4

 

 

 経済学

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

 

 

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

 

一応マンキューを挙げましたが、私は公務員試験対策として経済原論をそれなりに時間をかけて勉強したので、まったくの独習というわけではありません。時間もかかりますし、独習の難しい学問ではありますが、余裕がある人は勉強することをおすすめします。経済活動がどのような理論に基づいて動かされているのかを理解しておくと、新聞などから得られる情報量が格段に変化します。

以下の様な初学者向けの本もありますが、やはり先に理論的なことを学んでおくと理解が非常にスムーズです。大学の般教にもぐるのも効果的かもしれません。私は先にこういった本を読みましたがあまり役立てることはできませんでしたので、わからないながらも先に理論を覚えていってから、解説書で噛み砕いて理解するという順序でまとめていきました。

『ヤバい経済学』は経済学自体というより、統計的事実から多様な視点を導くプロセスを学ぶ上で役立つと思います。

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

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カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 世界経済編

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 世界経済編

 

 

ヤバい経済学 [増補改訂版]

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 会計・マーケティング

 

わかりやすいマーケティング戦略 新版 (有斐閣アルマ)

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企業に入社するにあたって、その企業がどのような立ち位置でどのようなビジネスを行っているかを理解することや、その企業がどのような財務状況にあるかを理解することは非常に重要です。というより、それらを踏まえていなければ、企業を選ぶことがそもそも出来ません。 こうした入門書を片手に企業のHPを見て、有価証券報告書を読んでみると、なんとなく企業の動向が掴めるようになっていきます。

 

 

ロジカルトレーニング 

 なんらかの主張を行うにあたって、仮定、結論、論拠を明確にする作業は意外と慣れていないものです。もちろんこうした作業は無意識レベルで誰もが行っていることですが、言語化する習慣をつけることで、より強固になります。自分がどのような根拠に基づいて主張を行っているのかを意識していると、例えば面接で突っ込みを受けた際にも対処可能です。

また、世間にあふれている情報も、必ずしもこうした作業を念頭において書き上げられたものとは限りません。情報を取捨選択し、妥当性を検討するためにはこうした論理性のトレーニングは有用でしょう。

論理のスキルアップ―実践クリティカル・リーズニング入門

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知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)

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大学院生のためのアタマの使い方

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議論のレッスン (生活人新書)

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 就活対策本

就活対策本と銘打っている本はこの一冊くらいで十分な気がします。後述しますが、ESはどんどん書いて就職カウンセラーなりに読んでもらった方が手っ取り早いですし、面接も同様です。

もしどうしてもESなどで具体的な文章を見たいのであれば、ES回答集みたいなものを一冊買っても良いかもしれません。ただあれは学生時代に十分な実績をもつスーパーマンによる模範解答集なので参考にならないとは思います。

ロジカル面接術 2016年基本編

ロジカル面接術 2016年基本編

 

池上彰の『わかりやすく〈伝える〉技術』は人前でのプレゼンテーションを学ぶにあたって最適ですが、一つ注意しておく必要があるのは、面接はプレゼンテーションではなく会話であるということです。よくテンプレを暗記して面接に臨んでいる人を見かけましたが、暗記するほど長くものを喋る機会は面接ではほとんどありません。 

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

 

 

 

 

 

四季報による企業分析 

さて、就職活動を始めるとなると、自分はこの先どのような人生を送っていくのかという答えの出ない問いにぶち当たります。なかなか将来のビジョンなんて簡単に描けるものではありませんし、学生の側から見てどの企業がどのような仕事を行っているかなんてわからないことだらけです。とはいえ、星の数ほどある企業の中から選考に進む企業を選別するにあたって、ある程度目標を定めないことには動き出すことも出来ません。その際、知名度年収仕事量など、比較可能な指標はいくつかあると思います。その中からどれを重視するか、まずはおおまかに決めてみて、気になる業界を業界地図でざっと見てみるとよいでしょう。社会人の知り合いがいれば、その人に話を聞いてみるのも効果的だと思います。

会社四季報 業界地図 2015年版
 

私自身は最初の段階として、主にこの指標を用いて受験する企業を絞っていきました。私の就職における大まかな目標は「知名度は度外視、参入障壁*5が高く競合が少ない業界で健全な経営を行っている安定した企業に滑りこむ」というものでした。前述のとおり、誰もが知っている大企業を狙って優秀な学部生に囲まれて就職競争を勝ち抜き、入社後も神経をすり減らして生存競争に没入するような生き方は自分には不向きですし、コストパフォーマンスも悪いと判断しました。そのため、規模や知名度はなくとも圧倒的な技術でシェアを獲得している優良企業に入社し、競争の少ない環境で働いたほうが持ち味は活かせると考えました。*6

そうした観点から企業選別を行った結果、志望企業は自然とBtoBのメーカーに絞られていきました。何故かと言うと、日本で規模に関係なく経営状態が健全な企業は、大体BtoBのメーカーに集中しているからです。

では、その基準にマッチする企業をどのように効率よく選別していくか。ここで有効なツールとなるのが四季報です。四季報とは、国内の全上場企業の重要なデータ(主要株主、平均年収、財務状況、等)を網羅的にまとめあげた本です。この本に載っている企業の全て、もしくは関心のある業界をチェックしていってください。まったく興味が無い業界以外はなるべく多くチェックしたほうがよいと思います。何故なら、企業分析を行っていくと、業界ごとのデータの特長が見えてきます。それはそのまま業界分析にもつながるからです。選考が進むにつれて「なぜあなたはこの業界を志望するのか」といった質問が増えてゆきます。その際に、他の業界の特色を理解していると論に説得力が増します。こうした地道な分析が就活では意外と役立ちます。具体的な分析方法についてはこの記事を参考にしてください。

分析が終わったら、関心のある企業をエクセルにまとめるとよいでしょう。私自身はメーカーを片っ端からチェックし、年収、規模、キャッシュフロー自己資本比率、売上高、営業利益率をマークしました。その上でプラスアルファ(文系院生の採用実績はあるか、等)を勘案し、点数の良い上位400社ほどをエクセルにまとめ上げました。多くの場合、リクナビなどでプレエントリーをする企業は膨大な数に登ると思います。毎日何十通も説明会の案内が来る中で、手っ取り早く業績を検索し、他社と相対的に比較できるアーカイブが手元にあると非常にはかどります。ESの締め切りを入力しておくと優先順位を判断するときやスケジュール管理にも有用です。

この作業はいつだって可能ですし、一週間程気合いを入れればできるものです。思い立ったらすぐはじめておくことをおすすめします。

 

筆記対策

筆記対策は文系院生であればSPI対策を一冊、もしくは数的処理の問題をひと通りやっておくと、足切りを超えることはできると思います。難関国立受験者・中学受験者・公務員試験受験者のいずれかでしたら必要ないかもしれません。私も数的処理の問題は苦手でしたが、公務員試験でひと通り勉強したため、SPI対策はしませんでした。もちろん筆記試験で落ちたことはありません。何社か受けてみればわかると思いますが、筆記試験の足切りはそれほど高いものではありません。というのも、特に中学受験を経験していない私大の文系学生であれば数的処理は壊滅的な場合が多いため、大したことのない点数でも相対的に見れば平均を上回っている場合が多いのです。もちろん筆記試験を重視する企業もあるため、臨機応変に対策を行うことが望ましいですが、時間がもったいないので筆記対策は最小限に抑えることをおすすめします。

*1:後述しますが、これはすべての学生に共通して言えることです

*2:詳しくは就活マニュアル以外の別のエントリに書きますが、人は自分が所属するコミュニティの影響を受けるだけでなく、そのコミュニティに自らを寄せていく傾向があると私は考えています。大学院におけるマジョリティはアカデミシャンか、それを目指す人間ですので、自らコミュニティにおいてアウトサイダーであるという意識は頭の片隅に置いておくと健全な精神を保てるのではないかと思いますし、そういった視点はいずれ役立つと思います。

*3:確かに、人文学を学ぶ意義は大きいですし、私自身、修士課程まで7年間人文系の学問を究めたという事実は必ず今後の人生に資するものであるだろうという確信を持っています。

*4:ちなみにここでは資格試験のような、結果が客観的に評価される類の勉強は除外しています。例えば人文系の学生であれば、未だに簿記を取得していればそれなりの評価をもらえるようですが、ここではあくまで、就職活動における情報を読み解くためのツールとしての知識を紹介しています。

*5:この場合の「参入障壁」とは「企業のビジネス自体が他社に真似されにくい」という点と、「新卒採用が少なく、またある程度の専門性が求められるために中途採用に職を奪われにくい労働モデルが成立している」という点の2つを含意しています。

*6:特に、BtoBのメーカーは基本的に法人営業が中心ですので、私のような口数の少ない人間でも不利になりにくいという目論見もありました。

文系院生のための就活マニュアル:スケジュール編

 

16卒の就職活動を取り巻く状況

 

本年度から就活が後ろ倒しになり、3月スタートになりました。面接は経団連の通告によれば8月以降のはずです。

私が学部生の時に就職活動をしたときは12月からエントリーが始まり、2月ことから個別説明会が開かれ、多くの企業が面接を4月から始めていました。

しかしながら、現状、ほとんどの企業が8月開始を守っていません。5月後半には個別説明会を終了し、エントリを打ち切る企業も多数ありました。どうやら4月5月に内定をだす企業も多いようです。

ということは、後ろ倒しにともない、3月からエントリーが始まるにもかかわらず、選考に必要なプロセスがほぼ同時にスタートするという状況になったということです。これは学生にとってかなり不利な状況と言わざるを得ません。3月から就活をスタートしていては選考に参加するための準備が間に合わない可能性があります。自分でできる準備は早いうちにすませておくべきでしょう。

ただし、一部優秀かつ洞察力ある学生を除き、全員が全員そのようなスタートダッシュをきることができるわけではない、というのが遅れてスタートした人間の感想です。誰だって暗中模索で就活を始めます。業界研究もままならない状態で3月にエントリーシートを出し、4月に面接を受け始め、そのような状況で優良企業から首尾よく内定をもらうなんて芸当は、簡単にできるものではありません。企業にとってもそれは同じで、優秀な学生を囲い込んだとしても、引く手あまたの学生がたった1つ内定が出たからといって、その場で就活をやめるとは限りません。事実、早めにエントリーを打ち切った企業が7月になって後期募集と称して新卒採用をシレッと再開するパターンもよく見受けられます。まともな選考のプロセスというのは、企業と学生が相互に就活のレールに乗ってからはじめて成立するものだからです。稲のないところで青田刈りはできません。

企業としても今回の後ろ倒しは本懐ではありませんし、対応を強いられ少なからず混乱しています。周囲の動向をみながら採用活動に慎重になっています。来年以降どうなるかはわかりませんが、多少出遅れたからといって致命傷にはなりえないというのが私の感想です。もちろん、遅れてスタートするメリットはほぼ無いですし、有限かつ貴重な時間を大いに意識するべきだと思いますが。

 

 

スケジュールについて

 

こうした状況を踏まえ、私は理想的な就活のスケジュールを次のように提示します。

 

・(M1夏休み):インターン
・1〜2月:おおまかな業界・企業研究、説明会に行く企業のリストアップ、自己分析、職種研究
・2月後半:筆記対策
・3月:説明会参加、ES提出
・4月以降:順次面接

 

院生の場合、研究活動が半年近くストップすることになります。私の場合は、読書会の参加などを除き、ほとんど研究は放置状態でした。このあたりは指導教官の理解や、自身の研究への思いなど、考慮すべき点が個人によって異なるため、早いうちにどのようなスケジュールで就職活動を行うか考えておいたほうが良いでしょう。参考までに、私のスケジュールは以下のとおりでした。

 

・〜5月末:公務員試験勉強

・6月上旬:四季報で優良企業をリストアップ、募集を行っているところにエントリー、順次説明会参加

・6月末:ES提出、順次面接

・8月初頭:内定

 

公務員試験には教養科目があり、数的処理の問題があります。私は得意ではありませんでしたが、民間のSPIに出てくる問題は苦労せず解けるようになっていました。ですので民間の筆記対策はしていませんし、たとえ分からない問題が出たとしても自分以外も解けないだろうという心持ちで臨んでいました。実際、筆記が落ちたことはありません。

また、学部時代に就活をしていたため、ある程度業界のアタリがついていたこと、迷わずBtoBのメーカーだけしか志望しなかったこともあって、短期間でもなんとか就活を終えられたところがあります。それでも6月の一ヶ月だけで50社近くの説明会に回ることになりました。もちろんその間、学業はほぼ完全無視です。

では次回から、スケジュールに沿って具体的な作業を見ていくことにします。

文系院生のための就活マニュアル:自己紹介編

 

文系院生の就職を取り巻く状況について述べた上で、私自身について軽く説明しておきます。

私は都内の某国公立大学の人文科学研究科修士課程に在籍する学生です。フランス文学専攻に在籍し、フランス現代思想を研究しています。

6月上旬に民間の就職活動を始め、8月5日に某機械メーカーから内定をいただきました。狭い業界なので詳しくは説明しませんが、四季報のデータを見る限り優良企業としての条件は満たしているように思います*1。入社してみないことにはなんとも言えませんが。

このように、2ヶ月弱という比較的短期間で内定獲得にこぎつけることができたのも、ある程度戦略を練った上で活動していたからであるように思います。

では、以下に簡単な略歴を掲載しておきます。

・2009年:某私立大学文学部人文社会学科に入学。仏文専攻に在籍。
・2013年:同校を卒業。某国公立大学大学院修士課程に入学。
・2015年:M2の秋から一年間休学。来春修了見込み。
・保有資格:仏検2級、短期留学経験有り、第一種普通自動車免許(MT)
・サークル:軽音楽サークル(役職なし)
・アルバイト:病院の事務、集団塾講師、留学生チューター、その他短期バイト多数。

大学には現役で入学していますが、修士課程で一年間休学したので、学部卒の同期に比べて+3で就職することになります。

休学と、就職活動のスタートが遅れた理由は、公務員試験のためです。当初は公務員を志望していましたが、成績などを鑑みるに公務員試験だけに特化することは危険と判断し、路線変更を行いました。

大学院進学にあたって大学を変更しました。付言しておくと、偏差値的な学歴の面から見れば明らかに不利になるような選択です。

*1:四季報の見方については後述