Excès, et Marges.

「余白への書き込み」

文系院生のための就活マニュアル:準備編②

 

3月1日までに、企業を分析するためのツールを身につけたら、就活の解禁とともに、実際に個別的な分析に移っていきましょう。主な作業としては次の2点があります。

  • 説明会の参加・OB訪問
  • 企業研究 

主に説明会やOB訪問では主観的な印象を測るため、企業研究は客観的な資料を掘り下げるため、という意味合いが強いです。しかしながら、これらの作業は相互に連関しています。詳しくは後述します。

  

 

説明会・OB訪問

 

前段階として、四季報などを使って候補となる企業を選別した後は、興味がある事業を行っている企業(+できれば興味のない業界に属する企業の)説明会に参加しましょう。その際、参加前に予習を行っておくことが望ましいです。というのも、説明会はそこにいるだけで企業の特徴や雰囲気を受動的に感じ取れる場である反面、そこから知ることのできる情報はHPなどから入手できる情報と大差ありません。わざわざ都心に赴いて貴重な時間と電車賃を割く手間を考えれば、それほど重要な情報であるとは言い難いです。まず、説明会に参加する意義を積極的に抑えておく必要があります。

では説明会に参加する意義とはなにか。一つは、説明会が、こちら側が知りたい情報を、匿名の状況で、ピンポイントに質問することができる数少ない機会であるということに存します。業界や企業の分析を行っていくうちに、わからないことは沢山出てきます。例えば企業HPの有価証券報告書を読んでいると、財務状況が何故急変したのか、セグメントの比率は何故このような内訳になっているか、などといった疑問が浮かんできます。もっと簡単な疑問なら、この企業はなぜ同業他社に比べて利益率がいいのか、この企業のこの職種はどのような働き方をしているのか、といったものもあると思います。

そもそも、企業研究は何のためにするか。2つの意味があります。一つはESや面接対策であり、もう1つは自分が将来働く企業を深く知るためです。これら2つの側面は作業として独立しているわけではないため混同しやすいですが、実際に企業研究を行うにあたって、目標として明確に区别すべきポイントです。

しかしながら、面接でされる質問に答えるために、ひいては自分がその企業で働くにあたって絶対に抑えておかなければならないポイント(転勤の頻度、福利厚生といった事柄も含め)を、遠慮なく聞くことができる場というのは、意外と限られています。そうした質問を的確に行うためには、事前の予習がある程度不可欠であると言えます。企業HPにざっと目を通し、質問したいことを事前に洗い出しておくのが望ましいです。*1

二つ目は、説明会が実際にその企業で働いている人と接することのできる機会であることです。就職活動において企業はかなりの割合で「その人が自社のカラーに合っているか」を重視しているように私は感じました。学生としても、これから自分が長く務めることになる企業にいる人間が自分と全く異なる性格の人ばかりという状況は避けたほうが望ましいかもしれません。ある程度面接前に、その企業のカラーとの摺り合わせを行っておくことで、ミスマッチを最小限に抑え、ムダな手間を省くことが出来ます。また、その企業のカラーや求めている人材、能力を理解することで、ESや面接で的はずれなアピールをしないようにすることも重要です。

これらの作業はOB訪問でも行うことが出来ます。情報の得やすさで言えば説明会より上でしょう。しかし、私はOB訪問は行いませんでした。単純に時間的な余裕がなかったためです。できればエントリーシートを出す前に、どうしても行きたい企業があれば行っておくとよいでしょう。

 

 

企業分析

 

上述の通り、説明会と並行して、企業分析を掘り下げて行う必要があります。企業HPで分からない点が出てきたら、説明会で聞けば良いですし、業界について俯瞰的に知りたい場合は業界本を読んでみたり、図書館を活用して定期刊行誌を読むという手もあります。

基本的に四季報から得られる情報は、現在からさかのぼって数年程度のものに過ぎません。ある企業が優れた業績をあげていたとして、それがどのような理由に基づくものなのかを把握しなければ、その企業が優良企業であるかどうかは判断できません。たまたま業界全体が上向きであるために、一時的に業績が良いだけである、ということも大いにありえます。自分が勤務するにあたって重視する事柄が、今後数十年にわたってその企業にありつづけるのかをある程度予測する必要があります。

また、企業の内実について知りたければvorkersのような転職情報サイトや、valuation matrixのような投資家情報サイトを活用すると良いでしょう。後者は踏み込んだ財務分析を知る上で参考になりますし、前者は実際に働いている[た]人のレビューを読むことが出来ます。特にvorkersは働き方やライフワークバランス、事業展望について仮借ない意見が載っており、企業研究の上で非常に有用です。ただし、基本的にこのサイトに書かれているレビューの多くは退社した人によるものであるため、個人の業績や職種、キャリア、主観に多分に影響を受けたものであることも否めません。その辺は留意しておくべきでしょう。

 

*1:ただし、注意しておかなければならないことは、先輩社員や人事の人間が、そういった的を射た質問に対し適切な応答を行うことができるかは分からないということです。大企業ならなおのこと、日々の業務をこなしながら自分が務めている企業の実情を正確に把握することはなかなか難しいことでしょう。また、先述の通り、財務諸表などを調べあげて選考に臨み、戦略的に内定を取る人間は少ないです。ですので、あまり先輩社員の志望動機も当てにならないと考えたほうが無難です。逆に言えばそれができている社員は本当に優秀な人材でしょう。