Excès, et Marges.

「余白への書き込み」

文系院生のための就活マニュアル:GD・面接編

 

院生であれば、日頃の議論や発表を通じて、持論を筋道立てて話すことには慣れているのではないかと思います。その能力は就活で重要であるにもかかわらず、それがきちんとできる学生は少ないので、是非それを立脚点として論を展開するように心がけてください。

一方で、就活におけるコミュニケーションの場は、そうした発表や議論の場とは根本的に異なることに注意する必要があります。以下、順をおって説明します。

 

 

グループワーク

 

正直、グループワークは私もそれほど得意ではありません。漠然としていますが、個々の役割と議論の流れを意識し、適切な発言ができれば及第点なのではないでしょうか。

では具体的に私はどのような戦略をとっていたか。上記の院生としての長所を活かすべく、基本的に「議論を一歩外から俯瞰し、見落とされた点を指摘、要所要所で論点を整理、議論の流れを誘導・修正する」という役割を担うことを念頭にGDに臨んでいました(できていたかはさておき)。実際、ファシリテーターとしての役割が高評価につながったというフィードバックを頂くことが多かったですが、それでもしばしば不合格だったことには以下の様な理由が考えられます。

一つは、一人ひとりが全体の状況と議論の流れを意識していればこの役割はさして必要ない、ということです。こうなると、よほど鋭い発言をしない限りは無難な印象に落ち着いてしまうでしょう。実際、レベルの高いディスカッションでは必要な提案を行うことができないこともありました。

もう一つは、これはおそらく私の性格上の短所でもあるのですが、一度煮詰められた論に対してクリティカルな指摘をしがちというところです。GDは限られた時間の中(概ね30〜40分)で妥当性の高い立論を行うことが至上命題となります。議論も佳境に入りはじめたところで今まで煮詰められた枠組みを壊しかねないような反証を行うと最終的な結論に至らない事態に陥ります。GDはアカデミズムの中で論文を書くこととはスパンも厳密性も次元が異なるため、蓋然性のレベルで物事を捉える訓練、決められた時間の中で協力して妥当な推論を行う訓練をサークルなり課外活動なりで積んでおくことが望ましいでしょう。

 

 

面接

 

面接で聞かれる内容は、ES編で述べた二つの問いに集約されると言っても過言ではありません*1。一方で、面接官が見ているのはこの問いへの回答だけでは決してありません。もしそうであるとするなら、選考はESだけで十分でしょう。

では面接官は何を見ているか。こちらも漠然としていますが「一緒に働きたい人間であるか」が、見極めにおける重要なポイントです。当然これは面接官や企業によって異なる基準でもありますので、自分ではどうにもならない部分があります。

しかし、そういった資質を見極めてもらうために、最低限抑えて置かなければならない前提は存在します。よって、ここでは面接を受けるにあたって誰もが意識しておくべきポイントに絞って話をします。

まず、繰り返しになりますが、「一緒に働きたい人間であるか」を念頭においてコミュニケーションを成立させることが大前提となります。面接になると「長所をアピールしなければならない」という心理が働いて、ついつい長話をしてしまう人がいます。また、そうでなくても日頃から話が長い人もいます(私のことですが)。また、就活本の中には「面接はアピールの場だ」という論理の下、すべての発言をアピールに結びつけるようにすべしと書いているものもあります。では、「簡単に自己紹介をしてください」と言われて5分も話し続けたり、「短所を教えて下さい」と言われて長所を話したりする人と正常なコミュニケーションをとり、これから長きにわたって協力して業務を遂行できると思うでしょうか?

そういった事態を回避するためには、面接において会話のイニシアチブを握っているのはあくまで面接官であり、受験者は面接官の質問(だけ)に、簡潔に答えることがまずもって重要であることを念頭に置く必要があります。例えば自己紹介なら「名前・学校・専攻テーマ・課外活動(+α/趣味など、アイスブレイクになるような一言)」で十分です。その中に気になるところがあれば面接官が質問してきます。付言しておくと、人間が集中して人の話を聞いていられるのは長くても一分程度です。例え長所の中に気になるポイントがあったとしても、3分も話し続けられてしまうと、質問しようとしたことも忘れてしまいます。

質問に対して回答を提示したら、次に「なぜ〜なのか?」と根拠を求められることになるでしょう。「何故大学院に進学したのか」「なぜ博士に行かず就職しようと思ったのか」、「なぜ(文系院生にもかかわらず)メーカーに就職しようと思ったのか」*2といったものです。もちろん、筋道立てて説明をすることはもちろん大切ですが、こうした根拠立てにおいては、面接官が納得できるかがより重要です。メーカー志望の人が一様に「ものづくりが好きだから」と答える理由はここにあります。私自身も「うちメーカーだからものづくりに関心が無ければ困る。あなたはものづくりに関心があるのか」と聞かれた際は率直に「ギターのパーツをハンドメイドすることが趣味だから日常的にものづくりに関心を持っている」と答えていました。確かにそれが趣味であることは事実ですが、冷静に考えれば半田ごてをいじっているうちに機械や素材メーカーの営業になろうと思い立つ人間がいるわけがありません。論理的な整合性は全くありませんが、「なるほどね」と思わせる説得力はあります。逆に言えば、いかにあなたの頭のなかに整合性のあるロジックがあったとしても、相手の腑に落ちなければ無意味なのです。それどころか、特に相手が理系出身の場合、文系院生は「理解の遠く及ばない得体の知れない人間」と思われている場合が多いですので、あまりにロジックに走り過ぎるのも危険でしょう。よって、面接において「共感できる人間である」という印象を植え付けて相手のイメージを修正する作業は非常に重要です*3。そのため、まず相手が納得できるような論理を考え、それに沿うエピソードを棚卸しする、という順序を踏まえる必要があります。

後は早口にならず、可能な限り笑顔でハキハキと話すことでしょうか。こういった外面に現れている仕草はなかなか自分では意識しづらい部分があるので、面接の練習は事前にしておくとよいです。それは緊張に慣れるという利点もありますが、なによりフィードバックを通じて、外面に現れているシグナルを客観的に理解することに意義があります。録画も効果的でしょう。

 

 

*1:特にBtoBメーカーの質問はオーソドックスな物が多いです。よく2ちゃんねるで見られるような変な質問や圧迫面接は皆無でした

*2:ちなみにこの3つは文系院生でメーカーに就職するのであれば最頻出の質問です。

*3:私は「大学院に進学したのはもう少し勉強したかったからで、それを成し遂げた今、次の目標に向かって社会に出たいのです」という話しぶりで、勉強好きな人間がモラトリアムを延長したと受け取られ得るようなアピールをしました。当然デメリットもあるでしょうが、それ以上に「頭の固い人間」と取られる方が危険だと判断したためです。