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Excès, et Marges.

「余白への書き込み」

「中学生レベル」の知識

小中学生レベルの問題を芸能人にやらせて、その出来なさを嗤うクイズ番組は沢山ある。優勝劣敗、試験の点数の出来で人間性までをも否定するような態度は日本の教育制度が生んだ悪しき慣習だと僕は思っている。もちろん、日本社会で生きる以上、兼ね備えていないと生活もおぼつかなくなるような最低限の常識を知らないことは、その人の人間性と不可分では無いと思う。

一方、「小中学生レベル」とはなんだろうか。思うに、日本の義務教育が国民に求める知識の水準はかなり高い。例えば社会科で中学生が学ぶ歴史、地理、公民の範囲は膨大であり*1、当然僕も全て覚えてはいない。これを全て網羅していれば、中学生どころか、日本人全体の中でも相当「教養がある」人とみなされるだろう。

つまり、特別な知識を身に付ける訓練をしなくても、中学の教科書の内容を隅から隅まで理解していれば充分であると僕は思うし、逆に中学レベルの問題が多少解けないとしても、その人が相対的に並外れて無教養であるかといえばそうでもないと言えるだろう。実際に、芸能人が解けない問題を果たして視聴者が解けるだろうか?僕は中学生レベルの主要五教化の知識すらあやしいことを自覚しているので、上記のクイズ問題は全く笑えない。

 

一方で、果たして中学生に膨大な量の知識を詰め込むことが良いかどうかを検討しなければならないだろう。何故なら、文科省が定める範囲を三年間で隅々まで教えることに成功している中学校はおそらく皆無だからだ(例えば中学歴史の範囲として世界史も含まれているが、どこも取り組んでいないだろう)。与えられた情報を運用する能力が未発達の段階で、一問一答の問題を解くことに専念させるのは偏ったやり方だと言わざるを得ない。しかしながら、範囲が膨大である以上、一番手っ取り早く、かつ到達度が高い方法は一問一答になってしまうだろう。そうすると、例えば排他的経済水域は200海里であることは覚えていても、それが何で、どういう役割なのかはわからない、ということになる。例えば上で脚注を落としたリンク先の一問一答に次のような問題があった。

経済水域(排他的経済水域)とは何か。説明せよ。

そのまま国際法の論文試験問題にもなり得るような問題だ。というのも、こういった、いわゆる一行問題は、解き手の知識をもろに反映する。中学生レベルの解答なら、せいぜい「200海里の水産や経済活動が行える水域」程度で及第点がもらえるのではないだろうか。一方で、専門に勉強している人なら1000字でも論じられるだろう。街頭でこの問題を道行く人にだしたらどういう解答が返ってくるだろうか。おそらくは中学生レベルの定義すら答えられる人は少数だろう。

別に定義を深く答えられれば良いというわけではない。「排他的経済水域」という単語を見た時に、その人がどれだけの背景知識を連想するかが問題なのである。例えば、沖ノ鳥島尖閣諸島竹島といった問題が考えられる。非常にアクチュアルな問題だ。それなら、「排他的経済水域とは何か」まず定義した上で、なぜ排他的経済水域を知っている必要があるか、どのような現代の諸問題とリンクしているかを説明したほうが、よほど実践的ではないだろうか。そうすれば「排他的経済水域とは何か」というただの定義も、より重要度を増して迫ってくるようになると僕は思う。

つまり、中学生レベルの知識というのは、実践的な諸問題を考える上では必要最低限の知識である。もちろん、各々にとってどの問題がアクチュアルかはそれぞれなので、全てを網羅する必要があるとは言わない。そうした取り組みが必要ない人にとってはあまりに膨大だと言えるだろう。

*1:http://study.005net.com/social/m-so.phpを参照。ちなみに、僕が教えている塾のテキストにはチャレンジレベルと称して現代史まで掲載されている。